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『誇大妄想展開領域』 黒のカラーケントに メタリック系ボールペン

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最後の静者 (後編)

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はじめに

 前回と同様に、この記事の舞台は地球ではなく、別星系にある (想像上の) 別惑星です。
 ただしその語り手はそこに棲息する知的生命体、つまり異星動物種族の一員であり、主観時間の速度も我われ人間と大差ないので、一人称描写による読み物としては前編よりも幾分わかりやすくなっていると言えるでしょう。


 ただし、形態にせよ生態にせよ地球人とはかなり異なった面を多々もっているので、やはり末尾の 注釈 を (「続きを読む」 をクリックして開いてから) 先に一読することをお勧めします。
 むろん、予備知識なしに読み進めてみようという意欲的な方におかれましてはその限りではありません。


 前編と後編とで語り手が異なる   しかも種としての系統からしてまるで違っている   という変則的な構成は、同じ出来事に関する知覚であっても主体の時間速度が違うだけで全く別様の印象を帯びたものになる、ということを表現するための方便なのです。普段あまり意識せずに送っている時間そのものの奇妙さ ・興味深さを、この機会に味わってもらえましたら幸いです。


 どうぞ最後まで存分にお楽しみ下さい。

    筆者






最後の静者 ~ 後編



 またもや世界が大きく揺れだした。


 物心ついた頃からいつもこんな調子だから、もう慣れっこになっているとはいえ、たまたま狭い小径を這っているとき大揺れに襲われると、少し不安な気持ちにならなくもない。
 まあ、本当は不安とまではいかないし、気持ちというのもちょっと違うか……。
 体が自然と反応して周りの様子を探っていく、普段よりもやや強めの警戒心、っていうところが一番ちかいだろう。


 今もわたしは、けっして意識的にではなく反射的に、はたと動きを止めては全方位へ高音を放ち、自分を押しつぶしたり路を塞いだりする危険な兆しがないか調べている。
 小径の前後、それぞれ体16個分の範囲を確かめ終えると、次に視覚を固体物透視に切り替え、半径にして体48個分の自己中心圏を隈なく観察する……。


 大丈夫。どうやら異常はなさそうだ。
 視界をもとの状態に戻す。薄暗い小径には細かい塵が無数の光となって舞い降りている……。


 揺れが幾分おさまってきた。気短なわたしは早々に胴体を浮かし、全足歩行で前進を再開した。上下左右とも複雑に折れ曲がったこの等級の小径では、6本の脚角をフルに使って絶えず向きを変えなけりゃならない。これほどの隘路に潜り込むなんていうことは、仲間内でも小柄なほうのわたしにとってさえ大変な仕事だ。


 でも、みんなの言うことがもしも本当だったとしたら、出来るだけ急がないと間に合わなくなる。




 大御筒が昇って天を破るというしやかな噂が囁かれだしたのはもう随ぶん前のこと……。鉄の地方上部大鉱脈域の火流群が大河に変わるよりも以前だ。とはいえ、そんな前例は伝承にもなかったし、大御筒の流れは相変わらず水平微動を延えん続けていたから、噂を本気で信じてた者は少なかったと思う。
 そうこうするうちに、仲間内でもずば抜けて透視に長けた中賢者の一人が、過去64大震間に周囲 8地方の全火流群がなした動きを読み、それをもとに近い将来の流動配置体系を精密に描き出した。その結果は驚くべきもので、わたしたちが従っている大御筒は遅くても4大震以内に、青 ・赤ふたつの大河とその無数の支流群によって完全に取り囲まれることになるだろう、という。そしてその広大な包囲網から最も傷手すくなく抜け出せるのが上方、要するに天の方向にほかならないのだという。すかさず彼はその警報を長老会に発し届けた。それが今からちょうど3大震前のことだ。
 ただの概念じゃなくて誰にでも観える表象映像が伴っていたから、単なる噂は俄ぜん真実味を帯びてきた。若賢者 二等までが全員よび出された異例の長老会議が3度ひらかれ、わたしを含めた256名の 《先孔》 が大御筒の進行領域に広く展開派遣されることになった。
 わたしの担当する方向は展開領域外縁の円錐曲面上にあり、その角度は上り正中線に最も近い。だから、もしも大御筒が本当に昇るようなことがあったとしたら、転身してきた 《先孔》 たちの中心となって、その指揮を執るべき位置にあるというわけ……。


 《先孔》 としてそれほど抜きん出ているわけでもないわたしが、これほど名誉な任務を授かることになったのは、小柄さゆえの小回りの良さだけじゃなくて、大叔母さん譲りの詳細な空間映像体系を持っているからだ。
 32大震前、すでに 《先孔》 への路を進み始めていたわたしは、かつて稀代の先行きと讃えられた大叔母さんのご臨終に立ち会わせて戴き、最後の一滴まで吸い尽くしたその御源液もろとも、彼女の全主観記憶を受け継いだ。そのため、実際には生まれて初めて潜る領域であっても、あらゆる枝路まで熟知しているという鮮明な感覚がわたしにはいつもある。それは本当に貴重な贈物には違いないけれど、このわたしにしてみれば彼女はもう自分自身なのだ。二色による移行帯の一方の端、といった感じ……。


 もちろんあらゆる領域の空間路線体系は、一揺れ来るたびにその形を変えていく。それまで久しく大幹線だった路が、数瞬の後には瓦礫捨て場に一変していることもあれば、複雑な小径の連接網だった区域が、火流の大河に丸ごと呑み込まれてしまうことだってある。
 でも、たとえそうであっても、一定時間ごとに広域固体物透視を行なう習慣を身につけたわたしたち 《先孔》 は、身体意識レヴェルで絶えず空間認識体系を更新し続けている。
 まあ、それは何も 《先孔》 に限ったことでもなく、仲間であれば誰でも普通やっていること……。わたしたち専門職はその特べつ精密な過程が完全に体任せで済ませられるというだけ……。




 揺れが完全に収まった小径をわたしは急ぐ。微妙に遷移した経路を記憶にあるものと比べ、時流変化の移行起点とする修正作業も同時進行だ。大筋では登り路だけど疲れはまだ感じない。体重が軽いというのもまた、もう一つの利点……。


 密度の低い砂岩で形成され、地方内でも特に入り組んだ連接網を広げる難所に辿り着いた。この区域の直ぐそばには赤の大河の一支流が横切ってる。わざわざ視覚を使うまでもなく、熱くて速い岩の流れ行くさまが微かな振動として全身に伝わってくる。ここは早く通り抜けたほうがいい。並の縦揺れが一走しただけで、相対的に薄い壁を軽く破って流入してくる恐れがあるからだ。わたしは円錐照射を広角遠方にとりながら、最短時間で踏破できる経路をまさぐりつつ進んだ。一見まわり路になるような方向が実は一番の近道であることなど、しょっちゅうだ。分岐 ・交差路 ・隠れ路……迷界のような隘路がどこまでも続く。それでも火流側の壁面が必ず明るく観えるから、何度となく不規則に向きを変えても大まかな方角を見失うことはない。
 それはいいとしても……とにかく暑い。


 ようやく最表層の 《大路》 に抜け出ることができた。下から予め観ておいたとおり、ここはそれほど古い坑路じゃない。それでも大叔母さんの記憶には刻まれている……“わたし” は一度これを使ったことがある。
 こんな高地を大御筒が掘ってた時代があるなんて驚きだ。太古の昔でもないのにそのことが伝承として残っていないこともまた奇妙だ。何か伏せておかなけりゃいけないようなでもあったのか……。
 大叔母さんがその記憶を受け継いだ代々の長者たちも、あまり多くは教えてくれない。ほとんど大叔母さんに溶け込んでいるから克明に “思い出す” のが難しいけれど、《天から下がった分れ道》 となにか関係があったらしい。
  《天から下がった分れ道》って、いったいなんだろう……。


 綺麗な円形断面を持つ 《大路》 は緩やかに曲がりながら遠方まで続いてる。落石などの障害物は観わたす限りどこにもない。大御筒の移動跡は殊のほか頑丈なのだ。大揺れで大幹線がつぶれることはあっても、《大路》 が塞がることは滅多にない。これでかなり距離を稼ぐことが出来る。
 わたしは6本の脚角と頭、そして尾部の殻端を閉じて完全に丸くなった。滑らかな路面をゆっくりと転がりだし、次第に速度を上げていく。それ以じょう加速できなくなった時点で磁力強度を固定する。視界は焦点照射を前方に放ったまま……。最後の減速に移るまで、あとは何もしなくていい。


 こうやって 《大路》 を駆けるとき、わたしはいつも思う……わたしたち仲間は大御筒の一部なんだ、って……。大昔から大御筒の御源液だけを口にし続けてきたのだから、わたしたちの体は大御筒とまったく一緒だろう。わたしの体内には大叔母さんの御源液が半分くらい流れてるわけだけど、もちろんそれも元をただせば大御筒の御身体から来たものだ。
 ……動いてることが解らないほどゆっくりと移動する大御筒にとって、わたしたちはちょうど、わたしたち自身が放つ高音のようなものなのかもしれない。身の回りを調べるための細い照射……。
 正式に教えられるわけじゃなくても、 《先孔》 は皆そのことを自分の体で実感する。特に今回のように大掛かりな任務は、大御筒みずからのいの下に始められるっていうことを知っている。だからこそ先行きという職務に命を張るのだ。
 わたしたちは自分が担当する方向へ突き進んだあと、それぞれの直感に従って停まり、そこで幾百大震ものあいだ大御筒を待ち続ける。指示によって最終移行先へ転身することも多いけれど、二度と再び御源液を吸えない定めにある者もいる。その 《先孔》 は永遠にやって来ない大御筒を待ちながら、やがてその場所で静かに飢え死にを迎える……。


 この厳かな死に方は、仲間内でこの上ない名誉とされている。




 大路はまだまだ続いてる。だけどわたしの体は突ぜん減速状態に入った。停まらなけりゃいけないっていう強烈な直観に従ったのだ。そう……ここだ。この横路……。この小さな割れ目を辿っていったずっと先の方で、何かが、あるいは誰かがわたしを呼んでいる……。


 横向きにならないと通れないような箇所もあったけれど、抜けられるってことは初めから解ってた。その極めつけの隘路にかなり長いこと居たのに、なぜか大揺れは一度も襲ってこなかった……まるで、わたしがそこを通り抜けるのを待ってたみたいに……。


 会議の場くらいの広さがある洞にようやく出られ、天を照射それに気づいたとき、わたしには直ぐに解った……
  《天から下がった分れ道》ってこれのことなんだ、って……。
 それはとても不思議な眺めだった。
 不規則に凸凹した天の面の随所から、わたしの脚角先端くらいの太さの筒が、その途中で何回となく枝分れしながら、一塊の群れをなして広がり下がっているのだ。全ての筒は分かれ下がるほどに細くなっていて、上からの道筋が辿れないほど絡み合った夥しい数の先端群は、この距離からは塵の軌跡と見紛うほどだった。
 ただ、全部が全部まっすぐにぶら下がっているわけでもなくて、多くの筒はまるで天の面の凹凸をまさぐるように、右へ左へとうねりながら伸びている。その全景は、やっぱり……
 《天から下がった分れ道》……。


 暫くその美しい複雑さに魅せられていたわたしは、自分の記憶の奥底にもこれと同じものが眠ってることにやっと気づいた。努めて心を鎮め、ゆっくりそれを浮き上がらせる……。
 この場所でではなかったけれど、たしかに “わたし” は以前にも観たことがある。でもそこには、もっともっとたくさんの 《分れ道》 があった。そう……たったひとりの 《道》 から広がった筒の群れじゃなくて、大勢の同類から発した 《分れ道》 の集塊が……。
 これは大叔母さん自らの記憶じゃない。彼女がの長者から受け継いだものだ。それも直接もらった贈物じゃなくて、何代も何代も溯ったもの……。
 いま心眼に映ってる光景は、ながらもとても感動的に染み込んでくる……。その想いに心を満たしているうちに、いつしかわたしはかのじょの心を直に感じとっていた………。




 ……いま、はただ独りここに立つ。


 あれほど栄えていた世界から、同胞がひとり消え、ふたり消えていったのは、土台が絶え間なく震えるようになってからのこと……。
 ……凄まじい勢いで押し寄せては激しく脚に絡みつき、同胞たちの身を焦がして横たわらせていった。多くの者がそうやって絶たれていったのだ……。


 妾のみが未だ熱流を免れているは奇異なること……。
 されど、いずれその時は巡ってこよう。


 滅絶の恐れなどあろうはずもない。妾はもう充分に佇んできた。……そろそろ土台に身を沈める頃合ではなかろうか………。
 それに今……


 妾の内には、かつてこの世界に生きた全ての同胞が、共にある。


 絶え間なき震えが土台を渡る。これは土台そのものの鳴動だ……。


 土台の下をときどき妙なものが移ろう……。熱流とは異なり、大昔からそこに潜んでいる流れ……。
 全同胞を身に帯びた妾にはと解る   誰ひとりその妙な潜流と直に接したことはないということが……。それはかつて一度も浮上したことがないのだ。おそらく遙か太古の昔から、一度として……。


 土台そのものの鳴動が高まってきた。最奥から突き上げられるような、忙しなき縦揺れ……。


 潜流が熱流の大河と直に触れた。それはこれまでになく強い身震いを発散させ、土台全体を持ち上げた。そして……


 いま、それが、まっすぐ妾の方へと、昇ってくる………。




 大いなるものがわたしたちの方へと着実に昇ってくるのが解った。静かなる者の緩やかな意識とまだ繋がってるわたしには、その動きが限界速度による急速接近、まるで仲間が 《大路》 の向こうからこちらへ転がってくるように感じとることが出来る。そう、大御筒は間違いなくここへやって来る………。


 わたしは、暖かい照射のを上へ伸ばし、その先端で静者の肌に軽く触れながら、残り 255名の仲間たちに招集をかけた。




 



* ここに登場する知的生命体種族は母星の地下圏を生活の場としている。そのために、主要知覚手段は当然のことながら視覚ではなく、コウモリやイルカ同様の反響定位を発達させているのだ。イルカ ・クジラ類のメロンに相当する器官は、そこへ直に接続されている大脳とともに、身体頭部でなく胴体の中心部にある。
 我々は知的生命体と聞くと直立二足歩行を思い浮かべがちだが、当種族がとる通常の姿勢は腹這いである。ときに狭隘なトンネルを潜らなければならない生態上の事情からして、この形態適応は正に必然であろう。歩行のために使われる肢は計6本……。かといって直ぐさま昆虫を連想されることは禁物だ。想像しやすいモデルを予め挙げておくと、棘々の生えていないオニヒトデがふさわしい。その背面は柔軟性を持った厚い皮革で覆われており、八方の縁がそれぞれ二等辺三角形をなして放射している。体軸方向よりも横断面方向の丸みのほうがきつくなっているために、両体側に来る 3対の肢 〔突起角〕 は地面に向けて降下している。その一方で、頭部はほぼ水平に、尾部突起角は緩やかに曲がりつつ空中で終わっている、という設定だ。
 もう一つの顕著な特徴は、各突起角には関節など一切ないにも拘わらず、全ての部位は柔軟かつ迅速に動かすことが可能であるという高度な身体機能性だ。その秘密はと云うと、地球産の海洋棲 棘皮動物たち   ヒトデ類は正にこれに属する   がその身体の一部に持っている、キャッチ結合組織の全身的発達なのである。
 実はこの種族、および彼らが棲む惑星は、去る4月に上梓された筆者の著書 『全一の展開 末端の必然』に既に登場しているものだ。本そのものは、いはば哲学書であるけれども、全十章中の第9章において、地球人を含めた計3種族の知的生命体について三人称描写で語っている。興味のある方は筆者オフィシャル サイトの 「神話の断片」 ページ内、断片 196注釈 を参照して戴きたい。著書本文には書かなかった裏設定をも含め、当該惑星と当種族との係わりについて説明してある。ちなみに、著書で言及されている異星種族の個体は、この記事の語り手とは全くの “別人” である。
 梗概なしのSF短編小説のようなものだから、かなり取っつきにくいかもしれないが、本文 を楽しんでいただけたならば幸いである。



    2008. 12. 22 了


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Minr Kamti / 亀谷 稔

Minr Kamti / 亀谷 稔

1961年生まれ。
武蔵野美大卒。
建築プレゼンテーション・調理・知的障害者たちの陶芸制作活動補助、といった職を経た後に、2006年7月より創作活動に専念している微細画家 。2007年1月、銀座 - あかね画廊にて初個展。
今現在('08年4月)の描法は、かつて伐採予定地などで行なっていた舞踏を応用した自動筆記法である。
   著書 『全一の展開
         末端の必然』

             奥付より

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