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ボーダーラインの初仕事 Part Ⅱ

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   ボーダーラインの初仕事 Part Ⅰ


       クライマックスまでのあらすじ




 ギリギリの土壇場で廃棄を免れ、辛くも卒業試験をパスすることのできた士官候補生 “ボーダーライン”……。長かりし過酷な英才教育を終え、ほっと人心地ついたのも束の間、いよいよ戦場へ送り出されようとしていた彼女は、さっそく戦争というものの実態を思い知らされ、その凄まじさに愕然となる。
 ところが、そんな初々しき彼女を待ち受けていたのは、なんと五百半期 〔250日〕 に一度という個体史上まれに見る一大攻防戦なのであった。


 いっぽう、驚異的な増殖能力を有する新型の侵害虫 〔ウイルス〕 に侵された “聖域” 枢要部では、パトロール兵 〔ナチュラルキラー〕 や重戦士 〔マクロファージ〕 など貪食系の単独騎兵 ・勇者たちが、熾烈な白兵戦を挑んで仇敵軍の掃討に当たっていたものの、体内に取り込んだそばからスライドして潜兵 〔変異体〕 への変貌を遂げてしまう、敵兵どもの恐るべき超絶能力を前に、さすがの “聖軍” も苦戦を余儀なくされていた。
 そんな窮境の直中にあって、決死の覚悟で初陣に臨んだ “ボーダーライン” は、いまだ不確実な情報ながらも、侵略軍 主要変異隊の身体に刻印された認識コードの一型が、自らの識別鎚 〔レセプター〕 番号と一致する可能性が高いということを知る。


 主戦場へと急行する士官たちの懸念をよそに、二転三転していく事態は、やがて体内世界と個体生命の存亡にも係わる重大な岐路に差し掛かる。得体の知れぬ潜兵隊を生み出す温床に逆用されてしまう、一騎当千の強者たちの活躍はかえって味方を不利にするという残酷なるパラドックス……。
 未曾有の危機に追い詰められた “聖軍” は遂に、全軍による即時無線会議の末、最終部隊たる砲兵 〔B細胞〕 を戦場に投入することを決する。





 幾十世代もの長年月に渡り、戦士を夢見る若者たちの間で歴史に残る武勇伝 ・英雄伝として延えん語り継がれてきた古の叙事詩   -
 “港路”大攻防戦の興奮をとくと堪能されよ!

まず Part Ⅰを読む





う い じ ん

ボーダーラインの初仕事 PartⅡ



 自己分割を済ませたには幾つもの視点があった。


 今、その全てを把握しようと懸命になっている。
 逐一おくられてくる相棒たちからの映像と合わせれば、その画像総計は相当の数になる。同時一括処理を行なうにもかなりの苦労を要するのだ。


 複雑きわまりないその作業に慣れるまでの間、の全身は隈なく過熱する。現在の体感温度は42度1分……効率性と危険性とが均衡線を描くギリギリのラインだ。あと4分たかい状態が四半期も続いたら、身奥 中核が熱だれを起こすだろう。わざわざ研修施設で習うまでもなく、職務というものは命懸けの仕事なのである。


 初陣の晴れ舞台に赴くの胸はいつにない昂りに脈打っている。恐怖がないと言えば嘘になるけれど、主観的には戦意高揚と区別がつけられない。
 無闇やたらな興奮を、高揚感に裏打ちされた集中と取り違えないようにしなければ……。曲がりなりにも主戦場の一翼を担わせてもらうことになるが、もし一つでも判断を誤ったならば、全軍にとって致命的な事態を招かないとも限らないのだから……。


 三桁にも及ぶ主観点の統合に追われているうちに、やがて街道空調域 往路最上流に広がる大分岐領域に到達した。我らが “聖域” を守るためには何としてでも落とされてはならぬ、体内世界最大の要所である。ここを死守する任務を託される誉れは誰にとっても身に余る光栄だろうけれど、のような半落ちこぼれには尚さらのこと良い刺激になる。気後れを抱く者に自信挽回の機会を与えるのは、我が軍が誇る伝統的配慮なのだ。札付きの半落ちこぼれでありながらその後の武勇によって伝説となった英雄は、寡聞なこのでさえ数えきれないほど、過去にあまた存在するのである。


 我勝ちに四つ玉を受け取ろうと犇めく無数の運搬手たちで埋まった街道を逸れ、知覚の群れと化した港路へと抜けていく。広大な網目を成すその領域は、だが、既に重戦士やパトロール兵ので惨憺たる光景を呈していた。かなり前方から先行する同胞たちの主観映像を受け取っていたとはいえ、初めて肌に触れる戦場の情景は、根が気弱なをたじろがせるに充分なものだった。
 戦場とは……要するに地獄のことだ。は今、ようやくその入口を覗いたに過ぎない。それなのに、この動揺……なんたる様か……。やはり半落ちこぼれには務まらない難行なのだろうか?
 死を覚悟して最終試験に臨んだその前夜にも増して、は不安になってきた。こんなことじゃ駄目だ。しっかりしなければ……。


 無数の分岐経路を一つひとつ辿っていく分身たちには、もはや唯ひとりの随伴者もいない。見通しの悪いこんな場所でもしも敵と遭遇したら、それぞれが単独で対処しなければならないのだ。砲兵まで駆り出さざるを得ないような圧倒的脅威を与え続ける侵略軍の姿は、同胞共有の短期記憶域にしっかりと記されている。観るからに不気味なその無機的外形と、まるでこの世の生き物ではないかのような非対称性……。
 どうやらこいつらは異世界の果てから攻めてきた正真正銘の怪物であるようだ。それが証拠に、この守り堅き体内世界の直中にあって、悠々と己を維持変容させ続けているではないか。こんな強敵が相手では、がごとき若輩者は手も足も出ないかもしれない。危うく廃棄を免れた者としての気後れが頭を擡げだすのを必死で堪えながら、は古の軍神に武運を賜わるよう祈るのだった。


 体表面から垂直に生えた識別鎚に、突然の激しい疼きが走るのを感じた。間違いない。たったいま注意を集中させた1体の分身の間近に、いよいよ渡り合うことになるであろう敵が潜んでいるのだ……それも、宿敵という意味合いにおいてこの私と縁ぶかい “相方” が……。これは本当にただ事ではない。わずか一縷の油断が直ぐさま命取りになるだろう   全身でそのことを悟った分身は、身を強ばらせながら分岐点を潜った。


 居た!


 元もと浮世離れしている侵害虫の中でも、ことさらに乏しいその表情変化の兆しから、相手がふてぶてしく笑っているのが直覚できた。
    何、クソ、こいつ。
 自らの気弱さを努めて払拭したは、胸中のざわめきをひた隠しにしながら、生まれて初めてまみえたを不動のまま待ち受ける。
 それにしても、じわじわと接近してきた仇敵の姿の、何と醜く肌に映ったことだろう……。いびつな円筒形をなした頑丈そうな体躯から、長さも形もバラバラで釣り合いが悪い上、不自然にも途中の関節でしか曲げられない筋張った肢が10本ほど突き出し、それぞれが独自のリズムで蠢いている……体躯の一端には細長い棒状の角が一本だけ生えていて、その先についた感熱点でこちらの様子を油断なく探っている……反対側の端は無数に分岐した末に終わっているため、まるで遠くから眺めた空調域内壁の模様みたいに観える……。
 やっぱりこいつ、絶対にこの世界の存在じゃない   なかば怖じ気づいた戦慄と共に胸中でそう呟いた分身は、それでも我が意に反して相手の懐に飛び込みつつ、識別槌の先端でその外骨格を撲打した。その一撃で敵の “鎧” を打ち破れるだろうなどと踏んでいたわけではない。ただ無我夢中でそうしたまでのことだ。ところが、なぜかこのときの肉迫が幸いした。


 呼び寄せた相棒たちが未だ到着しない焦りから来る、危ういまでに不安定な心理状態にありながら、意識のどこかでは冷静さを持ち堪えていた寄る辺なき分身に残された唯一の策は、ただ敵の型番をなんとしてでも突き止めたいという、いささか場違いな好奇心にすがることだけだった。それは、いはば極限状況における開き直りのようなもの……。でも、ひとたび開き直った者には無類の勇気と鈍感が降りてくる……。
 身体を接して即座に判ったことは、この並外れた生き物の、だがその奇怪な外見とは裏腹の凡庸な一面だった。……いったん見切ってしまえばなんのことはない。共有 記憶域に幾らでも前例があるような、自ら進んで食われることによって宿主を得るという、ごく普通の侵略虫と何ら変わるところのない寄生戦略への執着が、永き変遷の最果てに、こいつらを超強力な増殖能の権化へと変えたのだ。
 なるほど、重戦士たちが手こずったのも無理はない。他世界侵略の常套手段を飽くこともなく、ただし超絶究極の速効性をもって使うという、極めて悪質なこの戦略的欺瞞には、たいていの熟練防衛者が裏をかかれることだろう。そしてこの隠された狡猾さこそが、何にも増してこいつらを比類なき害虫になさしめている秘密だったのである。でも、それさえ突き止めてしまえば、後はなんのことはない……。


 は、分身から伸びた識別槌の突端で相手の体躯を押さえ付けながら、自分が知り得た限りの情報を全軍共有の記憶域へと流し込んでいった。即座に返ってきた反応は、ただでさえ高揚している私の身体を更に加熱するほどのものだった。全軍が希望に満たされたからである。
 全身の分子ひとつぶ一粒が、まるで個々に振動しているかのごとき溌剌さに内側から打たれ、思わず識別槌を動かしそうになった……。
    ことほぐのは闘いに勝ってからにせよ
 全同胞が一体化した世界内意識の総体が、逸るをそう諭す。
 そうだ。今は舞い上がってる場合じゃない。体前の憎らしい外敵を速やかに片付けて、この美しき世界に平和を取り戻すべき時だ……。識別槌から逃れようと懸命の害虫を、一瞬の隙から放すようなことがあってはいけないのだ。
 最優先でやらなければならないこと……努めて冷静さを収斂させた分身の頂部を通じ、押さえつけた伏兵の型番を慎重に探っていく。……やはりこいつはの “相方” であるらしい。完全に嵌るというわけではないけれど、凹凸の食い違いは唯の一箇所しかない。
 が幸運なのか、敵が不運なのか、いずれにしろこの状況は取り逃がすことの決して許されぬ最上の好機……。全同胞へ向けて瞬時速報を流しながら、敵の身のえをその詳細に渡って調べていく。砲兵が出張らなければならないような最終戦争にあっては、その九割方が情報戦なのだ。相手の弱みを先に突き止めた側が、勝つ……。


〔最初の分身がそうして闘っている間にも、広大な分岐域でそれぞれの偵察機動に散っていた “私たち” の中には敵と出会う者も増えてきた。当しょ案じていたほどのことはなく、それら全部の運動を同時に行なうという仕事は、さして難しいものではなかった。私たち職業戦士の身体=意識は、それぞれが生まれながらに定められた同じ任務を時間差つきで一斉に行なえるよう元もと造られているのだ。幾体もの分身を一連の波のごとく滑らかに操りながら、は、型番が合う組がほとんど皆無に等しいことを確かめつつあった。〕


 次第に自由になってきた注意力を分身に振り戻しながら、連鎖感応により近くまで来ていることが解る相棒の砲兵を待つ。いよいよを振るう段になった。はこの仕事をするために生まれてきたのだ。長かった研修時代の苦しみと劣等感が、ほんの一瞬だけ意識を掠めては去った。


 相棒が到着した。身内と連携して動くときの通話状態へと自らを切り替える。士官たる信号は全て命令形だ……。
    砲弾を装填したうえ、身体ひとつぶん後方にて待機せよ。
    了解!
 敵の身体を突き飛ばすようにしてから識別槌を退けつつ、そのまま相棒の脇を抜けて態勢を交代させる……。
    全砲門、いっせい集中砲撃!
 無数の砲弾が敵の全身を舐める。こちらの半分ほどもないその身体はたちまちに埋まり見えなくなる。
    速やかに制圧し、確認の後、われを追え!
    了解!
 その場は相棒に委ね、さらなる探敵のため先を急ぐ。




 既に感じ取っていた主戦場における攻防戦……。徐々にだが前面へ移行していったその場所はいま、大港路 中部域の二分岐洞に近いあたりだ。敵味方あい乱れた修羅場には累々たる屍がいたる所に漂っている。幾十ったりもの砲兵から発射された無限とも紛う砲弾の大群が、その混乱した現状に更なる熾烈さを加えている……。
 共有 記憶域から知られる限り、伏兵集団との混戦とはいえ、これほど大勢の同胞が直接たたかうというのは異例のだ。型番が一致するの “相方” も、この錯綜した戦場のどこかに未だ紛れているはずだ。
 集まりつつある分身たちの知覚網を広げ、丹念に周辺を探索していく。いつでも応戦できるように、それぞれの相棒はもう身近に待機させてある……。


 見つけた


    的を絞って砲撃! よくみて狙え!
    了解!


 ここにも……!


    そっこく攻撃! 見逃すな!
    了解!


 また一匹……!


    撃て!
    了解!


 ……と、そのときだった……
    斜め後方から一匹 接近! 注意されよ。
 避ける間もなく背のを掴まれる。だが、うろたえている暇はない。
    構わずに撃て! 虫を殺せ!
    射ち分け困難! 側転されよ。
 相棒の視点から捉えて射線を外す。
    いまだ! 迷わずに撃て!
 砲弾に襲われた敵はあっけなく剥がれる。もちろん私は無傷だ。
    そいつは入念に始末せよ。絶対に油断するな。
    了解!


 しぶとい仇敵の姿を貪欲に求めて、私は戦場を駆け巡った……。




 いずれの分身も、満身 敵兵による引っ掻き傷だらけになりながらも、初陣とは思えぬ沈着さを最後まで保って、殺しに殺した。それが戦争というものなのだろう。……あるいは、生まれ付きの戦士に具わった資質の為せる業か……。




 各所を転戦してきた同胞の姿が大半を占めるようになってきた。第一線に復帰してきた重戦士たちの姿もちらほら観える。砲弾片により増殖能力を封じられた侵害虫の残骸は、もはや貪食掃討者たちにとって脅威ではない。もうすぐ私たち砲撃部隊の役目も終わることだろう。そして、この世界にようやく平和が戻ってくるのだ。




 一時は完全に分断されていた同胞軍どうしが遂に合流……。大港路の中に歓喜と安堵の気熱が満ちる。
 告知将校が方々を巡り、逸る戦士たちの興奮を鎮めていく。


 戦争は、終わった……。




 全ての分身を身近に感じる。幸いなことに、戦死したは一割に満たない。初陣にしては上出来だと思う。
 今回は生き延びたの中で、次の戦争を体験する者がどれだけ居ることだろう……? このまま寿命を迎える分身が大半なのではないか……。勤めがないことを嘆くのは筋違いというものだろう。私たちは世界平和を維持するためにこそ存在しているのだから……。


 そのとき、不意に気づいたのだ。


 いま、は、生きている………。




    2009. 2. 7 了




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Minr Kamti / 亀谷 稔

Minr Kamti / 亀谷 稔

1961年生まれ。
武蔵野美大卒。
建築プレゼンテーション・調理・知的障害者たちの陶芸制作活動補助、といった職を経た後に、2006年7月より創作活動に専念している微細画家 。2007年1月、銀座 - あかね画廊にて初個展。
今現在('08年4月)の描法は、かつて伐採予定地などで行なっていた舞踏を応用した自動筆記法である。
   著書 『全一の展開
         末端の必然』

             奥付より

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